挫傷ってなんだ?
「挫傷」
フィギアスケートの羽生選手がケガをしてしまいました。
“検査結果は「頭部挫創、下顎挫創、腹部挫傷、左大腿挫傷、右足関節捻挫」で、全治2~3週間の見込みとなっている。” yahooニュースより
この「挫傷」、整骨院・接骨院が最も得意としている傷病の1つです。
でもこの「挫傷」っていう病名って実は捉え所の無い言葉です。
立場によって定義が全く違うんです。
柔道整復師養成学校の教科書に見る「捻挫」「挫傷」の概念とその歴史的変遷
佐藤 揵 帝京大学医療技術学部
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/8/2/8_2_123/_pdf
(1)一般医学では
1)最新医学大辞典によると「鈍的外力により組織が挫滅を受けた状態」を挫傷としている。
2)整形外科学教科書では、「大腿四頭筋損傷ー筋挫傷は直達外力によって起こる筋損傷である。」とある。さらに、本書・スポーツ整形外科総論の頁では「打撲・挫傷(創傷を含む)」と同じ項目の中にあるように、直達外力により発生する軟部組織損傷をさしている。
(2)柔道整復分野では
1)柔道整復理論(全国柔整学校協会編集1988)より
介達外力により結合組織や筋線維の小断裂が起こり疼痛を発生したもの。捻挫の項で述べたように、①基礎的状態のもとに②種々の外力が加わり③各部に損傷障害をひきおこすもの、という幅広い考え方であり「捻挫」と同じように柔整独自の解釈である、と述べている。
2)柔道整復学・理論編(社団法人 全国柔道整復学校協会監修2009)より
総論には「挫傷」の頁はなく、「筋損傷」と「腱損傷」の解説が述べられている。
筋損傷の概説として、介達外力によるいわゆる肉ばなれstrainと、直達外力による筋打撲contusionとして定義されることが多い、とされている。
筋損傷に加わる力について大きく急性を亜急性に分類している。急性は過度の筋緊張、不意に加わった荷重、直接的な外力、運動時の急激な抵抗などが、一度の外力として損傷を引き起こす。また、亜急性は損傷と認識できないような力が繰り返しあるいは継続して加わることで、突然臨床症状が現れる場合と、徐々に臨床症状が現れる場合がある。
腱損傷の概説としては「断裂」と「炎症」とに分けられており、断裂の例としてはアキレス腱断裂や棘上筋断裂をあげ、炎症の例はアキレス腱炎などの腱実質炎とド・ケルバン病などの腱鞘炎の双方がある、としている。
なお、「筋挫傷」の用語は「大腿部打撲」と「大腿部骨化性筋炎」の説明の中に出てくる。どちらも直達外力で発生した旨の説明に使われている。
中略
しかし、「組織損傷」として様々な損傷や炎症の状態があると教育されているにもかかわらず、いまだ「捻挫」「挫傷」としてひとまとまりで臨床的に呼称するにはやはり違和感を覚える(新井田)。
なんだか頭が混乱してしまいます。
患者さんに説明するときは「組織」の状態をお知らせしています。
現状に則した制度になるといいのですが。
上尾シティマラソンまであと5日
奥森先生は雨でも走ります。